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第2部 構想30年 現実味増す日韓トンネル

「心のトンネル」必要で一致―日韓有識者に聞く

NPO法人・日韓トンネル研究会 野沢太三会長

 民間団体が調査を重ねてきた日本側に対し、政府レベルで本格検討の姿勢を示し始めた韓国。双方とも、まず「心のトンネル」が必要との認識で一致するが、過去の歴史の影響から、目指すトンネル・ルートの違いも浮かび上がってきた。両国の有識者に聞いた。

経済、安保の地域的枠組みを、日韓先行で東アジアに恵沢


 のざわ・たいぞう 1933年長野県生まれ。東大工学部卒。工学博士。元国鉄施設局長。86年参議院議員。2003年小泉内閣で法相。06年、第4代日韓トンネル研究会会長就任。
 ――日韓新時代共同研究プロジェクトの報告書をどう評価するか。

 この報告書は21項目の一つとして、「海底トンネルの推進」という項目を掲げ、その必要性を説いている。報告書にはいろいろな提言があるが、日韓関係の改善のために取り上げているハードウエアは、日韓トンネルだけだ。新しい日韓関係をスタートする上で、極めて重要なリポートである。

 1990年、韓国の盧泰愚大統領が、わが国の国会で日韓トンネルの必要性を訴える演説を行った。すでに、このプロジェクトに関わっていたので、いよいよ始まるなと思ったものだ。日韓の首脳は、その後もこの問題に言及してエールの交換をしてきた。だが、国民のレベルで見ると、歴史的、感情的に難しい点が残っており、実現するためには国民各層の心の通い合う交流が必要だ。

 ――韓国での日韓トンネルに対する賛否はどのような割合か。

 各種の世論調査では、国民の6割が賛成だが4割は疑問だとしている。まだ反発が根強くある。参考になるのは英仏関係だ。両国は、ナポレオンの時、フランスが英国を攻撃しやすくするためにトンネル構想を練った。互いに大変な諍いを繰り返してきたが、戦後は欧州共同体で、もう戦争はしないという枠組みができ、英仏海峡トンネルが完成した。北大西洋条約機構(NATO)があり、英仏は一つの国のような機能になっている。

 ――日韓関係は、まだそこまで行っていない。

 日韓の間でも、経済のみならず欧州議会やNATOのような政治・安全保障面で、より堅固な枠組みをつくり、英仏関係のレベルまで近づける必要がある。そうなれば日韓トンネルも可能だし、東アジア共同体も見通せるだろう。

 ただ、いきなり砲撃をしたり、体当たりしてくるような国があっては難しい。国連は、常任理事国の反対で北朝鮮を非難できないなど、半身不随に陥っている。


 このため、まず経済協力から入り、安保も期待できる地域的枠組みを構築するのがよい。日韓の自由貿易協定の締結や、環太平洋経済連携協定(TPP)を通じ、米国を含めた環太平洋の諸国との連携を推し進めれば、大きな力となる。

 ――共同体をつくるのが先なのか、トンネルが先か。

 これは、鶏か卵かという議論と同じで、結果的に同時並行的に進んでいくことになるだろう。東アジア共同体やTPP結成という全体の動きと、その一つの具体的動きとしての日韓トンネルであり、これを進めることで、そうした大きな枠組みの結成に役立つだろう。

 ――日韓トンネルの走体は新幹線か、リニアになるか。

 実際に実行可能な案を作らなければいけない。そのためには、青函、英仏ですでに経験済みの鉄道トンネルとするのが適切で、新幹線とKTXが相互乗り入れするトンネルになろう。リニアは発想としては面白いが、未だ実験段階で、海底トンネルで大丈夫という実証がまだない。

 ――国際ハイウェイ財団が、地質調査を進めてきているが。

 調査データとして頂けるるものは活用してやっているが、まだ十分ではない。特に、対馬海峡西水道の方の調査は、国境があるために遅れている。韓国側の協力が必要であり、地形や地質、断層、施工法の共同調査・研究を呼び掛けている。ルートが定まると建設費用も決まる。

 韓国側には、歴史的経緯から、唐津を避け釜山―福岡ルートを望む声があるようだ。その気持ちは分かるが、列車の発着点は福岡でよいが建設の可能性やメンテナンスを考えると、工事の始点は唐津経由がよい。

 ――建設費用と工期はどれくらいか。

 ルートによって異なるが、約10兆円で、建設が始まれば10年でできるだろう。

 ――北朝鮮が、トンネル・ハイウェイ建設のネックか。

 北朝鮮を通過することができればよいが、それは日韓トンネル建設の必要条件ではない。私は、両国政府が公的インフラとして日韓トンネルの建設費を負担し、合理的範囲で利用料をもらう一方、民間会社はそれを借り受けて運営利益を得るという上下分離を提案している。従って、日韓の1億7000万人の利用で可能になるように、建設費と運営費を定めればよい。

 ただ、北朝鮮は早晩、変わらざるを得ないだろうが、人や貨物の通行料を取るだけで多額のお金が入るわけで、国境を開放し、往来を自由にすることは大きな利益になる。

 (聞き手=編集委員・山本 彰)


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