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第2部 構想30年 現実味増す日韓トンネル

専門の大学院・研究機関が必要、発展の軸には福岡―釜山ルート

釜山発展研究院広域基盤研究室 崔治国室長


 チェ・チグク 1961年生まれ。釜山大学卒。会社員勤務を経て釜山市役所で都市開発や交通政策などを研究。現在、国土海洋省の国家交通調整実務委員などを兼任。
 ――日韓トンネルの研究に携わるようになった経緯は。

 私の専門は交通政策で、広域交通について多くの研究をし、特に北東アジアに関心を持ってきた。北東アジアの交通網は経済協力や統合にとって重要で、その中心的役割を果たすのが日韓だ。日韓トンネルについて釜山市では1990年代後半から資料収集や専門家によるセミナー開催などを行ってきたが、本格的に研究を始めたのは2008年からだ。

 釜山は北東アジアの物流中心都市として発展するというビジョンを設定しており、国境を超えた広域経済圏の形成という面では福岡とさまざまな協力事業も進めている。だから釜山市としては先駆的な研究が必要だった。市長も高い関心を寄せている。

 ――これまでの研究結果で、技術的な面と経済効果などをどう分析しているか。

 まずルートは既存の研究結果に基づき、水深が深くないなど施工がしやすく、需要を最大限に引き上げ、歴史・文化的な側面でも問題が少ないことなどを前提にし、大都市である福岡と釜山を結ぶことを提案した。

 工法はTBM(トンネルボーリングマシン)と沈埋トンネル(あらかじめ海底に穴を掘り、そこに沈埋函を沈める)を併用することが考えられ、大手ゼネコンの大宇建設の諮問を受けた。

 総工費は92兆ウォン(約6兆8000億円)くらい。需要は2050年基準で年間約600万人を予測している。交通手段としては、英仏海峡トンネルのように高速鉄道とカートレインが適していると判断している。

 ただ、韓国側海域の地形地質調査が進んでいないため、総工費などは流動的だ。明確でない総工費を根拠に、多額の借金が必要だとして経済的な妥当性がないと結論付けるのは納得できない。また日韓自由貿易協定など経済協力体の形成いかんで将来の需要は大きく変わるため、今の段階で経済効果まで算出するのはあまり意味がないと思う。

 ――昨年10月、日本の関係者を招いてトンネル構想に関するセミナーを開いたが、何か成果はあったか。

 基本構想を整理し、今後の推進方向について討議した。最も大きな成果は、従来三つあったルートを二つに圧縮したことだ。

 一つは当研究院が提示した「福岡市―壱岐―対馬―釜山江西区」路線で、もう一つは日本側が主張する「唐津市―壱岐―対馬―巨済島―釜山江西区」路線だ。釜山市影島区に連結するコースは、すでに同区の開発がかなり進み、トンネル接続の要件が悪いため脱落させた。

 また日韓トンネルを研究する大学院や研究機関の設立を提案した。

 ――日韓トンネル実現には両国の相手国に対する感情がカギを握るといわれる。

 日韓の研究者が集まると多くの議論を交わす部分だ。私は常々まず「心のトンネル」を掘るべきだと思っている。相互信頼が前提になければトンネル建設は難しい。日韓トンネルを「新しい100年の日韓関係樹立に向けた先導的プロジェクト」と位置付けることが重要だ。

 ――韓国では中国との間にも海底トンネル構想がある。

 韓国、日本、中国は歴史的に複雑な関係にあり、将来の北東アジアを心配する人も少なくないが、3カ国は大きな枠では協力すべきだ。円滑な協力関係を築くには、やはり域内交通網の整備が必要だ。

 (聞き手=ソウル・上田勇実)


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