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第2部 構想30年 現実味増す日韓トンネル

構想30年 現実味増す日韓トンネル

両国が東アジア共同体の核に


日韓トンネルと連結されユーラシアの東西を結ぶ国際ハイウェイの概要

活発な物流で最も恩恵を受ける日本
韓国では大統領や有識者が積極姿勢


掘削が進められる調査斜坑の最先端部=唐津市鎮西町名護屋
 1981年に構想が発表されてから30年――。誰もが夢物語としか思わなかった壮大な構想が、今、実現に向けて、絶好の時機を迎えている。

 それは、世界の貧富の格差や民族対立を克服するため、国境を越えて自由に往来できる国際ハイウエイ構想と日韓トンネル・プロジェクトだ。この夢とロマンに満ちた構想は、世界基督教統一神霊協会(統一教会)の創始者・文鮮明師により、ノーベル賞受賞者10人を含む科学者を集めたソウルの国際会議で提唱された。

 発表後、民間で国際ハイウェイ事業団や、これに助言する日韓トンネル研究会が発足。調査・研究を進めてきた。

 日韓トンネル研究会初代会長の佐々保雄氏(1907―2003年)は著書『日韓トンネルプロジェクト』(世界日報社、1993年刊)で、「日韓トンネルが完成するのは、早くても20年先、2010年から2020年にかけてのことである」と予想した。

 だが、その期待通りには進んで来なかった。この間、首相在任中に、竹下登、海部俊樹、森喜朗ら各氏が外交の場で日韓トンネルに触れたこともあったが、政府は、日韓トンネルに着手しなかった。

 その理由として、半島情勢が不安定であること、採算性が見込めるか不明なこと、このプロジェクトが宗教団体によって先導されていること――などの見方がある。

 もとより、一民間団体でこの巨大プロジェクトをまかなうことなど不可能だが、唐津市の調査斜坑は、政府が同プロジェクトに着手するための触媒的役割を果たしてきた。今、工事は次の段階に向けて待機中である。

 資源の大半を輸入するわが国は、輸送手段を船のみに頼ってきた。これに対し、日韓トンネル・国際ハイウェイは、中国、朝鮮半島から日本への物流を一気に高めることができる。その最大の恩恵国は日本である。


掘削土砂を運搬するトロッコが出入りする調査斜坑=唐津市鎮西町名護屋
 これまで、韓国側は日韓トンネル構想に警戒的だった。それが今や、李明博大統領をはじめ、韓国の有識者がその実現を熱心に主張するようになった。

 加えて昨年10月、日韓両国の有識者による日韓新時代共同研究プロジェクトの報告書が発表され、日韓トンネルの必要性が真正面から指摘された。

 「北九州地域と釜山・馬山地域をつなげる日韓海底トンネルの建設は、日韓間の人的流れと物流の拡大に貢献するのみならず、島国である日本とアジア大陸全体をつなげるプロジェクトとなるはずである」と述べ、「日韓海底トンネルは日韓両国のみのものではない。それが北朝鮮を通過し、中国東北地域の瀋陽までつながるのであれば、日韓中三カ国の北東アジア鉄道網がつながりシベリア鉄道を経由しヨーロッパまで到達できる」と言明。

 「このような共同研究を踏まえて、両国指導者は国民の十分な同意を得る方法で、トンネル建設プロジェクトを推進することが望ましい」と訴えている。

 さらに同報告書は、日韓が関税を無くす自由貿易協定(FTA)や、ヒト、モノの自由な移動を実現する経済パートナーシップ協定(EPA)を締結し、東アジアで欧州のような「共同体」の核となるよう促している。

 わが国は、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加問題で、新たな開国を迫られている。戦後、しばらく機能していたわが国の一国主義は、今、あらゆる面で破綻をきたし始めているのだ。

 朝鮮半島は軍事的緊張が高まっているが、同プロジェクトで日韓が一体化することで、北朝鮮の国際ハイウエイ参加に誘うことも可能となってこよう。

 奇しくも、調査斜坑のある佐賀県唐津市名護屋は、豊臣秀吉が文禄・慶長の役で朝鮮半島に出兵するため突貫工事で造った名護屋城のあった場所である。

 負の歴史を超え、平和と相互の繁栄をもたらすプロジェクトとして、両国政府は日韓トンネルにゴーサインを出すべき時が迫っている。

 (編集委員・山本 彰)

 


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